そして鍼灸師になる(鍼灸師になった経緯シリーズ 完)
(前回の内容は 翻訳は大変だったけど鍼灸は面白い をどうぞ)鍼灸師になるきっかけを書き始めて2020年内に終わる予定が年が明けてしまいました。昨年12月はなぜか患者さんが多く、鍼灸院の仕事が忙しかったです。
そんなわけで博士論文を書いた先に何があるかを考えた。それを自分に問いただした時、鍼灸師になった方が良いという結論は簡単に出た。当時すでに若くはなかったので迷っている暇もない。すぐに鍼灸の学校を探して受験し、学校に通うことになった。
鍼灸師になる人は高校卒業してストレートで鍼を学びに来る人は少ない。私のクラスでもそういう人は30人中2人だけ。すでに社会経験がある人の方が多数派。下は18歳から上は60台以上まで年齢もバラバラ。私の学年には大学の元教授とか、現役の歯科医もいた。元力士、元俳優、元スポーツ選手、いろんな人がいた。私もフランスにいて鍼灸の学校に入ったので経歴が変わっている部類に入っていた。
私はフランス語ができるのが他の人達とは大きく違うところなので、鍼灸の学生時代は日本ではなく外国に行くのも良いかもと思っていた。需要がある事も分かっていたから。でも現在ではどうしても行きたいとは思っていない。東京で鍼灸師として働いてみると、日本でもフランス語圏の患者さんが来るということが分かった。日本に住んでいるフランス語圏の人達は意外と多い。フランス人だけではない。
フランス大使館を経由して来院する人が一番多い。お陰でフランス語を使う機会も週に何度かある。日本人は鍼灸と言うと腰痛や肩こりを連想する人が多いかもしれないけど、フランス人は日本人が鍼灸に持っているイメージとは違う理由で来る。そういう点でも貴重な存在だ。
今からわざわざフランスに行って開業する労力は相当なもの。私は7年間フランスにいたけど、いろんな人達のお世話になった。中にはもう他界してしまった友人もいる。人脈が当時とは違う。それよりも一番の問題は、フランスで鍼灸師として開業することは外国人にとってはかなりネックが多い。まずビザの問題がある。フランス人のパートナーでもいれば話は別だが。原則としてフランスでは医師が鍼灸をする。日本の国家資格の鍼灸師免許が使えない。フランスには漢方も学ぶ専門学校があるので医師ではない鍼灸師もたくさん開業している。でもフランス人が開業するのと外国人が開業するのとでは条件が違う。
自ら鍼灸の開業の為にフランスに行こうとは思わないが、フランスは私の心のふるさと。フランスの空気を吸いに行きたいが、新型コロナウイルスの蔓延で当分海外には行けそうもない。残念ではあるけど、コロナ禍になって何が大事なのかを考える機会も増えた。自分が人間が好きで、鍼灸治療が好きだということはよく分かっている。でも、鍼灸だけではなく、自分にはプラスアルファが必要なことも分かっている。昨年のコロナ禍に内緒でプラスアルファの活動を始めた。人生は短い。やらないで後悔するぐらいならやって後悔したい。
(了)
フランス留学から鍼灸師になった経緯
4話 そして鍼灸師になる(完)