ミズオノオト - Cahier de Mizuho -

2002年に渡仏し7年後にフランスから日本へ逆留学。フランスに行かなければ鍼灸師にはならなかった日本人のブログ。

鍼灸師になる前となった後

鍼灸師になってから変わったことがいくつかある。今回はそれについて。

 

  • イライラすることが減った

鍼灸師になる前よりもイライラがない。私はどちらかと言うと喜怒哀楽が激しい方だ。家族も喜怒哀楽が激しいので血は争えないと思っていた。ところが、鍼灸師になって色んな人の話を聞く回数が増えた。患者さんたちのバラエティに富んだ話を聞いていると、自然とイライラしなくなった。

みんな十人十色の価値観を持って話をする。鍼灸師はカウンセラーのような性格も持つ職業。強いストレス、悲しみ、怒りを内面に秘めた人、感情を押し込めている人、感情を出したい人、色んな人がやってくる。私が担当する人はどちらかと言うと話したがる人が多い。90歳の方の話はなるほど…と思ったり、こちらが穏やかになってくる。不思議と鍼をしていてこちらの調子がよくなる人もいる反面、施術をしているだけで疲れる人もいる。治療空間は色んなものが飛びかう。個性が面白い。鍼灸師になって初めて自分は人が好きなのだと知った。好きと言うよりも、人間の面白さ。

 

私は少し霊感があるらしいので、そういうものに左右されないように自分自身の体調にも気を使うようになった。自分自身の在り方が変わった。

 

辛いと訴えてやってくる人が良くなるのを見ることは本当に嬉しい。そういう方々を見ると幸せホルモンのオキシトシンがドバッと出ていると思う。「あんなに辛かったのが良くなった」という変化を目の前で見られる。治療開始には爆発しそうなマイナスオーラを出していた人が終わる頃にはニコニコ笑っていたり。そういうのを目の当たりにして嬉しくないわけがなく、私自身の幸福感に繋がっていると思う。

 

  • 手が温かくなる

多くの鍼灸師がそうなると思うけど、手が温かくなる。「今から鍼を打つ」という意識のせいか、手が急に温かくなってくる。

よく手がお灸みたいに温かいと言われる。でもそれは一日中温かい訳ではない。鍼灸師の職業的特性だと思う。いつも温かいというより、鍼を打とうとすると温かくなる。自然とそうなった。

寿司職人は握る時に手の温度が下がると言うけど、私たち鍼灸師はその逆。ある時期から患者さんに鍼を打とうとすると勝手に手が温かくなるようになった。

 

自分が鍼を打ってもらう時に冷たい手で皮膚を触られるのは嫌なので、なるべく手の温度を保つように努力もする。真冬は水も冷たいし、患者さんごとに手を洗っていると手が冷たくなる。でも、治療が続いているとそのぐらいでは手の温度は下がらないらしい。

 

まだ鍼灸の学生の頃、手が冷たい人とペアになると冷たくて不快。そういう経験も反面教師になっている。

 

  • 季節の症状や年齢による体の変化が分かる、健康管理しやすい

季節の変わり目に多くなる症状が患者さんを通して分かる。結果として、自分も気をつけようという目安になる。そのおかげか、喉が痛くなるということがなくなった。鍼灸師という職業柄、手洗い、うがいはコロナ前から徹底している。季節の変わり目で喉がイガイガするという人が多くなってくると、私も気をつけようという意識に繋がる。

 

季節以外でも「昔は大丈夫だったのに、最近はXXXだ。」という話も良く聞く。年齢を重ねるごとに肉体は衰えていくし、自己治癒力も低下していく。当たり前のことだけど、それを受け入れられないでショックに感じている人も多い。

私も順調に歳をとっている。若さというのは素晴らしいと思うけど、私は昔の自分より今の方が好きだ。歳をとって経験値が増えてくると、あらかじめ予測がつくことが多い。若かった頃よりも楽になっている。こうすればこうなるのは分かっているからXXはしないし、した方が良いことはする。

 

自分が元気じゃないと患者さんに対して治療をすることができないので、自分の健康を第一に考えるようになった。自分の体調が治療に影響する。鍼灸師としてお金を貰っているのなら自分の健康管理も仕事のうち。

 

 

というわけで、鍼灸師になって、良い変化しかないのであります(笑)。