ミズオノオト - Cahier de Mizuho -

2002年に渡仏し7年後にフランスから日本へ逆留学。フランスに行かなければ鍼灸師にはならなかった日本人のブログ。

今でこそ鍼灸師だけど、昔は怪しいと思っていた(鍼灸師になった経緯シリーズ 1)

私は父が医師で、両祖父も叔父達も医師や歯科医師。弟も医者になってしまった。医者だらけの家族。でも、私は実をいうと医者にだけはなりたくないと思いながら育った(笑)。それについてはここには書かない。

 

父親が医師なので子どもの頃は病気になったとしても薬は大抵は家にあって、父の指示で飲んでいた。何を飲めばいいか分かってしまってからは勝手に薬を飲んでいた。今思えば最悪の環境である(笑)。

日本の医師は西洋医学ベースなので、私は日本を出るまで「鍼灸に行こう」なんて考えは浮かびもしなかった。むしろ、なんだかよく分からない怪しいものと思っていた。

 

元々体が弱いわけではなかったのも理由かもしれない。よく鍼灸師になった理由で「自分が辛かった時に鍼灸に行って助かったから」という人がいるが、私の場合は鍼灸を受けたこともないのに鍼灸師になった。

 

鍼灸のイメージが変わったのがフランスだった。最初にお世話になったホストファミリーのお母さんが西洋薬を使わない代替療法が大好きだった。フランス人の友達や知り合いが増える程、鍼灸オステオパシーに行く人が結構いるんだなということが分かってきた。

 

薬大国のフランスでは化学物質を身体に入れるより、もっと優しい方法で身体の状態を整えたいと思う人がかなり前から増えている。無農薬やビオ野菜の盛り上がりについても私がフランスにいた頃には既に定着していた。

 

私はフランスにいた7年間で病気らしい病気はしなかったが、唯一病気になったと言えばアンギーナ・急性扁桃炎だった。喉が腫れ、声が出なくなって近くの医者に行った。抗生物質を飲まないといけなかったが、おかげで治った。(ちなみにこの先生はユニークな人で私のフランス生活の配役でも重役を担った。いつかこの先生についても書きたい。)

 

私はフランスで大学で働くという素晴らしい機会を与えられた。ある日、同僚Aがアンギーナ急性扁桃炎にかかってホメオパシーで治療していると言った。当時、私はホメオパシーというものが分からず、ホメオパシーとは何か同僚Aに聞いた。その症状を出している元の物質をほんの少しだけ摂取して治療するものだそうだ。同毒療法。

 

フランスにはホメオパシー専門の薬局も沢山あった。私はお世話にならなかったが、ホメオパシー好きの人は多かった。

 

でも、自分の経験からアンギーナは相当に喉が腫れるし抗生物質でちゃんと治した方がいいと痛感していたので、ホメオパシーで急性扁桃炎を治す同僚Aのことが奇異に思えた。

 

しばらくして、別の同僚Sが「リウマチで膝が悪いから仕事帰りに鍼に行く」と話していた。特に何も思わなかったが「鍼 Acupuncture 」と頭の片隅には残った。同じ頃、私はフランス人の友人Bに誘われてベリーダンス教室に通っていた。そうしたらパソコン作業の多いその友人Bが首が痛くてベリーダンスに行けないと言う。仕方がないので1人で行っていたが、しばらくして治ったと言う。しかも「鍼灸に行って治った」とニコニコしている。その友人Bは仲が良かったので、「鍼」というものが脳に強くインプットされた。

 

そういう出来事が続き、フランス人は医者に行く以外の代替療法を選択する人が増えているんだな、という認識が生まれた。

 

オステオパシーに行っている人がとても多く、鍼灸に行く人も当時すでにいた。

 

その後、私は鍼灸師になる事を決めた訳だけど、フランス人の友達に話すと「すごい!」と興奮するのに、日本人に話すと「。。。。。(鍼灸師?)」となり、何で?と不思議がっているのがありありと見て取れる。無理もない。私も昔は鍼灸に行くなんて考えもしなかった。それが今や毎日鍼を打ち、お灸を据え、お灸の匂いが髪に移って自分から煙の匂いがするなと思いながら通勤電車に乗っている。

 

 

(続く)