ミズオノオト - Cahier de Mizuho -

2002年に渡仏し7年後にフランスから日本へ逆留学。フランスに行かなければ鍼灸師にはならなかった日本人のブログ。

コロナで良かったこと

もはや、コロナ騒ぎで影響を受けていない人はいないかもしれない。

 

世界中がコロナウイルスの為に非常事態に陥っている。今まで誰も味わったことのない状況が随分と長く続いている。初期の頃と今とでは人々の様子も変わってきた。

 

私は3月末に九州旅行をする予定だったが飛行機が行き帰り共に欠航になった。代替便の提案もされていたけど、とても旅行する雰囲気ではない。行きたいと思っていた九州国立博物館もずっと閉まっている。「今じゃなくて、もっと良い時期に行った方が良いんじゃないの?」と言ってくれる福岡出身の人もいたのでキャンセルした。

 

本来なら九州にいるはずの日、偶然に有田焼の泰山さんが来ていた。佐賀の窯元の方が「佐賀に来て欲しかったな〜」とお話しされていたが、その方もコロナ患者の多い東京から戻って来て欲しくないと言われ、しばらくは東京にいるそうだ。

 

佐賀にも行きたいと思っていたので、九州に行ったつもりで有田焼を買った。

鮮やかな色の丼。漆と同じ色の椿が描かれている。

赤と黒が漆のお椀と色がマッチしそう。

f:id:FreresLumiere:20200402213910j:image

 

私の勤務している鍼灸院の近くには大企業がたくさんある。先週の小池知事の外出自粛要請が出て、在宅勤務の人の数が一段と増えた。小池さんの自粛要請の後は予約変更の電話が沢山あって平日の予約には結構な影響が出た。ただし、元々平日には来られなくて土曜日に来院している人達はそのまま来ている。今週の土曜日も今の時点ではあまり影響が出ていない。先週辺りは「万が一、ロックダウン・都市閉鎖になった場合はここは空いていますか?」ということも聞かれた。

 

コロナ騒ぎが起きてから、来院する患者さんの様子を見ていても人それぞれだ。

リモート勤務、在宅勤務に疲弊している人が沢山いる。在宅だから楽だろうと言うのは誤解で会社のデスクと違う環境で腰痛になってしまった、とか体が痛いと言う人が急増。

お子さんがいると仕事ができないので実家に預けたと言う人もいた。その方は普段家にいる子供がいなくなり、預けた実家からもあまり連絡が来ないのでイライラを隠せない様子。普段は自分から話さないのに、鍼の間ずっと話しているのでおそらく心配と寂しさで鬱憤が溜まっていたのだと思う。

鍼灸に来たいと思っていたが、お子さんがいる。やっと予約をとったら小池さんの自粛要請が出て、それでキャンセルという人もいた。

 ホテル勤務で仕事が休みになってしまい、動かなすぎで体が辛くて初めて鍼灸を受けるという人もいた。色々な人がいるのでこちらは飽きない。

 

コロナウイルスで亡くなる人よりも、思いつめた自殺者が増えるのではないかと危惧している医師の話を聞いた。事実、見えない不安を感じていたり、個人事業主で仕事をしている人は経済的にも大打撃を受けている。コロナの不安よりも将来を心配している人も多い。 

 

ただ、個人的にはこの騒ぎでとても良かったことがある。

あったはずの集まり等がどんどんなくなって、自宅にいることが推奨されているので、やっとのことでやりたいと思っていた部屋の整理、片付けができた。なんだ、そんなことかと思われるかもしれない。でも、仕事をしていると、帰ってからも家事に追われている。切実だ。よく患者さんが「週末は死んだように寝ている」と言っているが、その気持ちはよく分かる。

 

日本で働いている人達のライフスタイルはあまりにも忙しい。鍼灸師をしていると色んな人達の話を聞く機会があるが、自分の時間がない人の方が多い。仕事以外にやりたいことをやっている人は相当優雅な方だ。結婚してるかしてないか。子どもがいるかいないか。シングルか。実家暮らしか。という家庭環境によって大分変わる。私自身、もし結婚していたら、今のような勤務形態では働けていない。家事もやってくれるようなパートナーとなら可能かもしれない。

 

私は鍼灸師として自分の健康をキープすることも自分に課せられた仕事と思っているので、明日の仕事に響くような事はしない。そうすると残念ながら仕事だけになってしまう。でも鍼灸師という仕事はそれだけの価値があると思う。

 

コロナ騒ぎのおかげで(と言うと不謹慎なのは重々承知)自分の時間が普段より多くなり、やっと家が片付いた。通常の仕事形態だとその時間がなかったので、はっきり言ってスッキリしている。それをある人に言ったら「私も!」と言って笑っていた。結構そういう人もいるのではないかと思う。

 

この先どんなことになるか分からない。だからこそ余計に今自分がしたいことをできるうちにしておこうと思う。今度やろうと思っていても、その時はできる状況ではないかもしれない。人生は有限だ。