ミズオノオト - Cahier de Mizuho -

2002年に渡仏し7年後にフランスから日本へ逆留学。フランスに行かなければ鍼灸師にはならなかった日本人のブログ。

鍼灸治療を受けに来るフランス人 Les français et l'acupuncture

今週は続けざまにフランス人の新患さんが来た。フランス人の患者さんと日本人の患者さんの数を比べれば日本人の患者さんの方が当然多いが、それでも一定数のフランス人が来てくれている。フランス大使館の医療リストの「フランス語可の鍼灸師」の欄に私の名前が出ているのでそれを見て連絡をくれるパターンが一番多い。今週の人達もそう。

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フランス大使館のHP(フランス語版)informations pratiquesをクリックすると liste de notoriété médicaleが出る

 

フランス人の患者さんは鍼灸は「エネルギーを引き出す」と思っている人が多い。実際にそれは間違いではないと思うけど、最初の問診でそれを言う人が数人いた。

 

来院したフランス人の患者さん達 

  • 旅行中や仕事で来日中のフランス人で日本で鍼灸を受けたいと言って連絡をくれる →旅行中に腰痛が悪化したという人もいたけど、ある持病や疾患を持っていて、「日本で鍼を受けたい」と前もって連絡してきた人の方が多かった。鍼灸初めての人も。難しい疾患の方に「一度の治療では効果は出ないから、フランスで受けた方がいい」と言ったけど、それでも構わないから鍼して欲しいと言う人もいた。フランス人の医師・鍼灸師も来院。
  • 日本に滞在している在日フランス人→なぜか耳関係が多い。耳鳴りになって「フランスの親戚の医師に相談したら鍼が効果があるかもと言われて来た」という感じ。
  • 一度来院したフランス人の家族やパートナー、友人(ゲイのパートナーもいて面白い話を聞かせてくれる ※ )→フランス人に限らずだけど、気にいると家族や友人を連れてくる。 ※ 在日フランス人はゲイカップルが多いらしく、パートナーが仕事をしていて片方が仕事をしていない「主夫」が沢山いると患者さんが教えてくれた。因みに、フランス人は妻の方が日本で仕事を得て、夫が日本に付いてくるパターンも結構ある。それを日本人に話すと驚かれる。

 

 

フランス人が問診票に書いている「主訴」

難聴、耳鳴り、腱鞘炎、アーノルド神経痛(後頭神経痛)、不妊症(女性・男性)、更年期障害(男性・女性)、交通事故の後遺症、腰痛、過敏性腸症候群、脊柱管狭窄症、鬱病パニック障害

 

全体的にフランス人の場合は腰痛等の整形外科疾患ではない理由で来る人が多い。日本人だと腰痛・肩こりで来院する人が多いけど(勿論その他の理由もある)、フランス人は腰痛等が鍼灸に来るきっかけにはなっていない。鍼灸がエネルギーに関係すると言っている人が多いから、日本人と捉え方が違っているかもしれない。来院した人達に聞いてみると主訴に書いてなくても腰痛や頚部痛もあると言う。ただ、それが鍼灸に来る理由ではないという点は面白いと思う。

 

 

自分で開業していればもっと大々的に宣伝しようと思うけど、今はスタッフの中で対応するのが私だけなので数が多くなると色々と支障が出る。というのも、治療中にフランス人から電話があって、治療を中断して電話に出ないといけなかったり、予約を取りたいと連絡くれるけど、職場にいない時や予約表を見れない場所で連絡をもらうから。

 

言語ができるというのは有利で、私がフランス語で挨拶すると相手の表情が緩む。無理もない。母国語で話せる相手がいるとなると元々おしゃべりが多いフランス人。ずっと話している人も珍しくない。私は7年フランスに住んでいたし、日常会話は困らない。でも言語は使わなければ衰える。相手が言っている事は分かるが、自分で言いたい時すぐに単語が出ない事がある。たまに分からない専門用語がポンと出た時、相手は夢中で話しているから「ん?」と思う事もある。でも大分そういうのにも慣れた。話しているとこちらの言語回路も活性化される。フランス人の患者さんが来院してくれるのもフランス語の訓練になっているけど、もっとフランス語に触れる機会を作りたい。

 

通訳機を使えばいいという人がいたけど、相手が話して、止めて、調べてまたこっちが話してという作業をしていたら、2倍どころか4倍ぐらいの時間がかかると思う。通訳するより直接話すのが一番シンプルだ。

 

私のフランス人の友人達で鍼灸の事を聞いたら、鍼灸はストレスや鬱に良いという印象を持っていた。友人で逆子で鍼灸で治した人もいた。私がフランスにいた頃、友達が鍼灸に行っていて、そういうフランス人の行動を見ていて鍼灸というものに興味を持ち始めた。実際やってくるフランス人に聞くと、薬を飲んだりしたくないし、西洋医療ではない代替医療を選ぶ人達が年々増えていて、鍼灸もそういう選択肢のひとつだと言う。

 

フランスでは私がいた頃から日本ブームで、日本が好きだという人が多かったが、日本へ行った事があるという人はまだ少なかった。私が帰国してからは実際に旅行で日本に来る人が増えて、日本に住みたいという理由で仕事を日本でしている人も結構いる。そんな人達の中に日本で鍼を受けたいと思う人がいるとは嬉しい事。どんどん来て欲しい。