ミズオノオト - Cahier de Mizuho -

2002年に渡仏し7年後にフランスから日本へ逆留学。フランスに行かなければ鍼灸師にはならなかった日本人のブログ。

固定観念は誰にでもあるけど Nous sommes tous otages de nos préjugés !

フランスでイスラム教徒の友人と親しくなり、私の場合は特にパキスタン人というカッコ付きなんだけれど、彼らの行動を見て考えさせられることは多かった。

 

彼らは自分達がどう見られているか知っていた(というか、意識していた)。ニューヨークのワールドトレードセンタービルが崩壊する同時多発テロが2001年にあった。私が渡仏した2002年、あまりイスラム教徒に対する良いイメージはないのは仕方がないかもしれない。でも彼らは自分達がそういう目を向けられているのを知りながらフランスに生きていた。

 

あまり書くべきことではないかもしれないが、当時フランスにいた日本人留学生は無賃乗車をしていた人が結構な割合でいた。留学しているとお金が有り余っている訳ではない。切り詰めて少しでも節約したいのは分かる。カラーコピーを使ったりしてズルする方法を教えてくれる日本人もいた。地下鉄は日本のように切符を通さないとホームに入れない訳ではないし、フランスのメトロは昔は今よりも無賃乗車しやすかった。一度や二度はやった事がある人はいると思う。コントローラー(抜き打ちで不正乗車を検査する人達)が来たら急いでコンポストしたり(笑)。そういう人が多いから、今はパリのメトロはバリケードがあるし、前の人と一緒に潜り抜けるのは見るけど、昔ほど無賃乗車やり放題ではない。

 

ところが、私が仲良くなったパキスタン人の友人達は決して無賃乗車はしなかった。彼らは言っていた。

 

イスラム教徒で、パキスタン人であるというだけで、僕たちに向けられている視線は厳しい。最悪だ。もし何か悪いことをして、やっぱり彼らは悪事をする。モラルがない。なんてことにはなりたくない。

 

そういう理由でなくても、彼らはそういう事をする人達ではないと一緒にいて分かった。そういう人達だった。

 

当時、無賃乗車している日本人、等、色々と知っていた。パキスタン人の友人が淡々と発した言葉を聞いて思った。私達日本人は「日本人という安心ブランド」にぶら下がってフランスにいられる。なんて気楽なんだろう。実際はズルしているのはこちらの方なのに。空港でも見た目で検査される。

 

先入観は誰にでもあるし、私も先入観は持っている。私が仲良くなった彼らは本当にいい奴としか言いようのない、でも視線を気にしながら生きていかざるをえない人達だった。でも同時に彼らはそれをネタにして自分達で楽しんでもいたようだった。これを書きながら思い出す。外国人同士、留学生同士助け合った日々。留学生同士の連帯感もあって、彼らに日本では到底できないお願いをして、そのおかげでフランスにいる事ができたとも言える。具体的に書くのは自粛(笑)。

 

彼らによく言われていたのは、当然のことながら「パキスタン人が皆善人ではないし、イスラム教徒もそうだから、気を付けないといけない」というものだった。私はよっぽど運良く善人のパキスタン人達に出会ったのだろうか?(笑)

 

イスラム教徒は国によって(人によって)も違うとちらっと前に書いたが、同じイスラム教徒でもいつも無賃乗車をしていてコントローラーに捕まり、その度に「ごねていた」人も知っている。偏見が生まれると困るのでどこの国かは書かないが、その国の人は私の経験ではそういう悪さをする人が多い。そういう人を多く見ているので、やはりそういう人が多いのかなと私の中でもその国に対する偏見が生まれている。 

  

日本ではフランスに対する固定観念も強い。

個人主義であるとか、マスコミの影響での「おフランス」。勿論そういう面もあるにはあるが、それはフランスのほんの一部に過ぎない。私はそういう「おフランス」を求めてフランスに行った訳ではいないし、それについてここで書くとゴチャゴチャするので割愛する。

 

鍼灸の学校に入ったら、フランスで差別はなかったかとクラスメートに聞かれた。

 

「フランスに旅行に行った人がものすごい差別をされたと言っていた。向こうは日本人に対する差別があるんでしょう?!」とまるで自分が差別を受けたかのような口ぶりで言われたことがある。その人はフランスに行った事がないけど、知り合いからの話でそう思っているらしい。その人の剣幕が凄かったので私の脳裏にはっきりと刻まれてしまった。

 

私の場合はいわゆる差別というものはフランスで受けたことがない。どちらかというと日本人は受けにくい方だと思う。むしろ優遇されたことの方があった。ただし、差別を受けたという人も知り合いにいる。

 

確かにフランスに差別は存在している。でも、差別を受けるのはもっと違う人達で、それは深刻なフランスの社会問題に発展している。フランスは多人種が集まっているので島国の日本よりも「差別」に非常に敏感だ。差別されたら訴える。

 

日本人の場合、マナーを知らなくて差別を受ける事もあるかもしれない。その国の文化、マナーを知ることは重要だと思う。それと言葉。長期滞在するならちゃんとしたフランス語を話せる方がいいに越した事がない。言葉がきちんとしているだけで相手の態度がガラッと変わる。

 

例えば、マナーといえば、フランスではお客の方から挨拶する。こちらからするのが当然。いらっしゃいませの日本とは正反対。挨拶もなく店に入れば、差別されるかもしれない。それは差別ではなくて、挨拶もなく入る側が失礼だからだ。

 

私がリヨンで部屋を借りる時に外国人の友人に保証人を頼んで書類を持って行ったら、保証人はフランス人じゃないとダメだと言われた。それが、唯一の外国人としての不快経験かもしれない。でも、それは差別ではなく、フランス人しか保証人を受け付けないという決まりがあっただけなんだろう。私がフランスにいた頃に同じことは日本でも起きていたと思う。恐らく私が外国人として当時の日本にいたら、もっともっと大変だったかもしれない。

 

私はフランスで生活していて、フランス人は勿論、外国人の友人達から本当に助けてもらった。不安も多かったけど、いつもなんとかなった。私は今でもフランスに行くとホッとする。大変なことは沢山あっても、色んな人に助けてもらった思い出で安心する。イスラム教徒の友人達の助けもその中に含まれる。どこへ行っても良い人はいるし、悪い人もいるし、恥ずかしがり屋も、奥手の人もいる。国籍は関係ない。

 

固定観念を持たない人なんていないが、なるべく先入観は消して人と話したいなと思う。「フランスはこうなんでしょ」と日本で言われるステレオタイプが同じようなもので飽き飽きしてしまっているから。勿論、フランスで「しょうがないな〜…」と思うことも実は多い。でも、そういう所があるから余計に愛してしまうのだ。

 

  

 

前にインスタで投稿したインド料理の写真。パキスタンの友人達のお陰でフランスだけでなく、美味しいインド料理の恩恵にもあずかったフランス時代でした(笑)。 

https://www.instagram.com/p/Bbq3ktPDfnk/

妹にインドカレーを作るの巻。Curry indien pour ma sœur. 王道のチキンカレー、ひよこ豆・ダール・ムングの3種の豆カレー、パクチーのポテトサラダ、小蕪のピクルス、チャパティ。食後はカルダモン、オールスパイス、白胡椒で作ったチャイ(蜂蜜入り)。