ツボの名前のローマ字表記は一筋縄ではいかない Points d'acupuncture
Twitterはメモのように記録していけるので便利なんだけど、後でまとめようと思ってもやらない。結局初めからブログのような場所に書いておいた方がいい。
というわけで、今回はブログに書きます。大した内容ではないんだけど(笑)。
腹診の本を読んでいてふと思ったことがある。
フランスの学会へ行くと、鍼灸のツボ表記は漢字ではない。記号だ。フランスだけではなく英語圏の国際学会でもツボ表記は当たり前だけど漢字ではない。中国留学経験がある人は「漢字」でも表記してくれるが、記号だけで書いている場合がほとんど。
日本では鍼灸の経穴名(けいけつめい・ツボの名前)は漢字で習うし、少なくともWHOで認められている361穴は全て覚える。ツボの名前は常用漢字にはなくて、パソコンで打っても表示されずOS環境によっては文字化けしていたものある。学生時代はそういうレアな漢字を覚えるのも大変だった。でも国際的な表記までは覚えさせられない。少なくとも私が学生だった頃はそうだった。
しかしながら、欧米ではツボの表記は当然だけど漢字ではない。
学生時代に誰かが「ツボの名前は漢字だけど、欧米ではどうしているのか。欧米では中医学は理解されないんじゃないの?」と言っていた。
でも、中医思想を理解するのに漢字は必要ないと思う。
経穴(ツボ)の名前はそのツボの主治や意味合いを表しているのもが多い。日本の鍼灸師は漢字で習うので、漢字で言われれば分かる。ただ、今や鍼灸は世界中に広まっていて、英語圏、フランス語圏、もちろんアジアでも盛ん。日本よりも盛んかもしれない。
国際学会に行くと、ツボはアルファベットで表記される。「経」を表すローマ字とその「経」の何番目なのかを表す番号。
例えば、腎経という経がある。英語では腎はKidneyだから「Ki」。Kidneyのライン上にある何番目のツボなのかを番号で表す。下の写真は2018年11月にフランスで行われた鍼灸国際学会で私が撮った写真。「妊娠期の鍼灸」というテーマでフランス人が発表をしていた。腎経は婦人科や生殖関係の治療ではよく使われる。
上の写真の中に「12Ki」と書かれているものがあるが、これは腎経の12番目なので「大赫(だいかく)」に対応する。Kだけ書いている人もいるが、これが腎経なのは明らか。
別のフランス人の発表を見ていたら、英語ではなくフランス語の腎臓の略で書いている人がいた。フランス語の腎臓=ReinsなのでReと記されている。下のパワーポイントは同じ日にツボの名前の由来を発表していた人のもの。
実は最初の写真の発表者はとても親切で、フランス語表記と英語表記の両方をパワポに書いてくれている。12Kiはフランス語では12R。同じツボなんだけど、ローマ字が違う。番号は変わらない。
漢字で経穴名を学んだ人にとっては漢字表記が一番いい。発表者が中国に留学していた場合は、大抵は中国語でも表記してくれている。そうすると、日本人としても漢字なので発音できなくても理解できる。
でも、中国語とピンインだけ書かれていると欧米人は分からない。
一番良いのは、中国語(漢字)、ピンイン、記号表記の三種類載せてくれること。ピンインは載せなくても良いかもしれないが、有名なツボだとフランス人でも中国語のピンイン読みで知っている。フランス人の鍼灸師から「XXXを刺激してくれないか」とツボ名を中国語で言われたことがある。私はたまたまそれがどこのツボのピンインか分かったが、普通はツボ名をピンインで言われても分からない。
鍼灸は世界で活用されていて嬉しい限りなんだけど、国際学会とかに行く前にはちょっと準備が必要。 せっかくパワーポイントでツボ名をずらっと公開してくれても、記号がずらずら並んでいる。
前述の学生時代のクラスメートが欧米人は中医を理解できないのではないかという疑惑。それについては欧米人でも理解できると思う。その発想はクラシック音楽が日本人には理解できないと言っているのと同じだ。
フランスの場合は哲学的なことが好きで論理思考に慣れているので、むしろ理解しやすいのではないかと思う。ただし、共通言語が通常はピンイン読みなので、それを中国語に直してもらわないと何のことを言っているのか分からない。
フランス人鍼灸師は大抵はピンイン読みは知っていても、漢字でどう書くかは知らないので、会話の最中にうーん。。。。ということがものすごくよくある。ピンインを知ってるだけでもかなり良い線を行ってる人なんだけど。