ミズオノオト - Cahier de Mizuho -

2002年に渡仏し7年後にフランスから日本へ逆留学。フランスに行かなければ鍼灸師にはならなかった日本人のブログ。

アテネフランセのサンテティック Cours (extrêmement) intensif de la langue française

ここのところフランス人とメッセンジャーで話す機会が多いので、通常よりもフランス語を使う機会が増えている。

 

この機にもっとフランス語に触れておこうという気持ちが湧いてきて、友人がくれたフランス語で書かれた木についての本を何気なく読んでいた。色んな木について1ページに纏っていて読みやすい。しかも、普段の日常会話ではあまり使われない木に関する用語も使われている。新単語が出ると、調べたぞという優越感にも浸れる。(というのは今回書きたいことではないのだが。)

 

パラパラめくっていたらMicocoulierミコクリエという木のページが出て来た。

Micocoulier で思い出す。ああ、蘇る記憶。知る人ぞ知る、アテネフランセAthénée français のフランス語習得集中コースのサンテティック。

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サンテティック課程の最後の方ではAlphonse Daudet アルフォンス・ドーデの短編「L'arlésienne アルルの女」の暗記・暗唱というものがあった。

 

実際全部暗記した人は私のクラスではいなかったと思う。が、私たちは無理と分かっていてもフランス人の俳優さんが吹き込んだテープを聞いて音読する宿題が出されていた。何度も聞いたので冒頭や最初の方は読み手の独特の調子まで覚えている。

そこに出てくるのがMicocoulierミコクリエ。音の響きだ。

 

たまに「アルルの女」の音読テープの音が蘇る。しばらく封印されたようになっていたのが、Micocoulierミコクリエという文字を見て蘇った。

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私がフランスに7年いて、不自由なく(色んな事件はあったが苦ではなかった)過ごしていたのも、サンテティックの日々があったからこそだと思う。

 

  • 発音
  • 動詞の活用
  • 文法

 

上の3つに関しては徹底的にやらされる。文字通り「やらされる」のだ。発音は日本語に存在しないフランス語の音を強制的に作る。日本語にない音だから、どうやってその音が出ているか、口の形、舌の位置、鏡を持って確認しながらずっと、「ウ〜オ〜ウ〜イ〜エ〜ア〜」となにかの宗教の団体の合唱のようなことをしている。

 

conjugaison(=動詞活用)も発音記号と音節付きで何回も書いて提出する。小脳が無意識にそれを出せるまでという事なのだろう。嫌でも覚える。でも、いちいち活用を考えなくてもいいので、後で非常に楽。あの過程は必要だったと思う。女性形、男性形の性数一致だとかも間違っていると歯がゆくなってくる。私の「フランス語への愛」はサンテティックで育まれていたかもしれない。あの独特の雰囲気。時代錯誤の教授法。でも、あのプロセスは必須だった。

 

この過程を終えて、フランス語に関しては妙な自信があったし、あれのお陰でフランスでもやっていけたと思う。サンテティックをやって、できないことなんてないという変な自信もついた。やり方と継続、それが脳に染み込むまでやるだけ。習慣の問題。

 

ただ、ずっとフランス語を話していなれば口の筋肉を使わなくなっているので、たまに長時間話すと疲れる。

 

サンテで同じクラスだった人が偶然私と同時期にリヨンにいた。フランスにいた時は外国人やフランス人の繋がりが多くて、日本人とはつるんでいなかった。そんな中のフランス時代の唯一の日本人の友人はサンテティックのご縁。あの時代のことを知っている日本人は彼女だけかもしれない。そういう意味では非常に貴重な人だ。リヨンで引っ越す時、新しくアパートを探す間、夏休みの1ヶ月だけ泊まらせてもらったり、お互いの彼のことを話したり、相談されたり。彼女との思い出は沢山ある。

 

サンテティック。アテネフランセのあの教室で、フランス語の基礎を作り、フランスに発った。サンテティックは青春の1ページ。今でもフランス語を使えているのはあそこでの経験があったからこそ。

という事を「Micocoulier ミコクリエ」で思う。